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ベトナムの落とし穴

ベトナムの落とし穴なのかもしれない。思い返してみれば、僕はよくこの国で騙されている。以前、ホーチミンシティで力車ともめたことがあった。僕は、「三十」と交渉して乗った。ベトナムではよく下三桁のゼロを省いていうことが多いからだ。つまり僕は三万ドン、当時のレートで三ドルほどだと思っていた。しかし目的地に着いた力車夫は、「三十ドルだ」といいはった。ドンにすると三十万ドンになってしまう。それはないじゃないか、三万ドンを差し出したが、車夫は受けとろうとしない。

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路地裏に引きずり込まれた。ふとした隙に、力車夫は僕の眼鏡を奪ってしまった。姑息な奴だった。払わなければ眼鏡を返さないというわけだ。後になって、この力車夫は、ミニホテルが集まるバックバーツカー街であるデクム通りに屯する札付きの男だということがわかったが、僕はすっかり騙されてしまった。嫌だったのは、その一部始終を眺めていた力車夫がいたことだった。三十ドルをとられ、腹立たしげに路上に立つ僕に近づいてきた。「どこまで行きます?俺は彼みたいなワルじゃない。安くしとくよ」ベトナムはなんと厳しい社会かと思ったものだった。