為替相場の変動は、輸出入価格の変更を通じて貿易収支に影響を与えます。一般に、自国通貨の為替相場が下落すると、国内製品の価格競争力が上昇して輸出量の増加を招くのに対し、輸入量は海外製品の価格上昇により抑制され、貿易収支は改善すると考えられます。しかし、実際には、為替相場が下落したにもかかわらず貿易収支が改善せず、当初(半年から数年)は逆に悪化する場合があります。こうした状況は六七年のイギリスのポンド切り下げ時に観察され、その時間の経緯と貿易収支の変化を図示するとJの形に似ているところから、J―SHAPEあるいはJカーブと呼ばれました。単純化のため、ある国Aが対外経常取引の輸入を外貨建てで行い、同輸出を自国通貨建てで行っているとしましょう。A国の経常収支が赤字で、A国通貨の為替相場が下落したとすると、この相場変動は経常収支にどのような変化をもたらすでしょうか。長期的には、為替相場の下落はA国の輸出を増大させ、輸入を減少させる結果、経常収支は改善すると考えられます。しかし、短期的には必ずしもそうなるとは限りません。為替相場が下落しても、短期的にはA国の輸出品のコストはほとんど影響を受けないので、自国通貨建ての輸出価格は変化しませんが、輸入品に関しては、輸入品の生産国におけるコストが短期的に不変であるとすれば、為替相場の下落率だけA国の自国通貨建ての輸入価格が上昇することになります。