腰については、あとでリズムを論じるところで具体的にお話ししようと思います。今は腰というものを「うたったボディの基底層」としてイメージしておいてください。それは個人の想いよりも強く文化に規定されます。日本人は伝統的に、稲作民族としての腰をもっています。安来節(どじょうすくい)でも、「えらいこっちや、えらいこっちや」でも、オカメーヒョツトコの踊りでも、日本の上着の踊りは、「腰の入った」状態がノーマルです。
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もちろん能の舞いや日本舞踊など、芸として洗練された舞いでは、そんなふうに野卑に腰を入れたりせずに、幽玄な摺り足が動きの基本となるわけですが、民衆に密着したポピュラー・カルチャーの世界は、歌舞伎の見え、やくざの「おひかえなすって」、相撲の四股、盆踊りの「かついでかついで後下がり」などにおける、重心の安定をよしとする下向きの腰使いが基本でありました。そうした日本の限定はできませんが、腰は、ポルカを跳ねる腰とは違いますし、馬の速歩を真似たフォックストロットを踊る腰とも違います。ただ腰も結局は環境がつくるものですから、環境が変われば変わるでしょう。